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2010-03-17

難病「ニーマン・ピック病」

 「ニーマン・ピック病」は、初めて聞く病名だ、最近はいろんな病気が発見されて大変だ。

 以前だと違う病名で診断され適切な治療もできていなかったのでしょう。

 産経新聞ニュース記事【ドラッグ・ラグ】(1)「薬があるのに使えない」難病に立ち向かう子供たち 参照

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ニーマン・ピックC型とは?より引用

ニーマン・ピック病の種類
 ニーマン・ピック病は大きく2つに分類されています。ライソゾームといわれる細胞内の小器官に存在する酵素(酸性スフィンゴミエリナーゼ)が欠損するA型・B型と、NPC1またはNPC2遺伝子に生じた変異のため、細胞レベルでエステル化していないコレステロールと糖脂質がエンドソーム/リソソーム系に蓄積する、C型に分類されます。ニーマン‐ピック病C型は、ニーマン‐ピック病A型やB型とは、生化学および遺伝のレベルにおいてはまったく異なる疾患です。
A型(急性神経型)
生後3~6ヶ月くらいの間に著明な肝脾腫が見られ極めて進行が早く2歳までに死亡する。
B型(慢性非神経型)
進行が緩徐で軽度の肝硬変がみられるが、神経症状はない。
C型(慢性神経型)
肝脾腫の他に進行性の神経症状をみる。
D型(Nova Scotia型)
カナダのNova Scoti地方に特有な型で、骨症状が乏しい。
E型(非神経型)
思春期以降で発症し、神経症状がないまま進行し成人する。
ニーマン・ピック病C型の原因
 ニーマンピック病C型は劣性遺伝の形式をとる疾患で、ヒト染色体18番の中のNPC1遺伝子が欠損しており、現在日本でも20例近くの患者さんがおられると言われています。もう1つの原因遺伝子HE1が欠損してもほぼ同じ症状になると考えられていますが、これは世界で6家系しか報告がなく、日本人ではまだ知られていません。(ニーマンピックと言う名前の由来は、単にニーマンさんとピックさんという2人の研究者が発見した疾患だと言う事らしいです)
 脂肪やコレステロールと聞くと「太る」とか「体によくない」などと思われがちですが、実は私たちの身体にとって必要不可欠のもので、必要以上存在すると身体に悪影響を及ぼします。脂質といってもたくさんの種類があるのですが、おおまかに単純脂質と複合脂質に分けられます。単純脂質は、生命維持のためのエネルギー源としての役割を果たし、複合脂質は、細胞膜の構成成分として存在していると共に、各タンパク質を細胞内外の決められた場所に輸送されるのに関与している事が、最近の研究でわかっています。こうした脂質は脂であるがために水である血液中には単独で存在する事ができず、リポ蛋白として血中に存在しています。細胞内に取り込まれたこれらの脂質は、さらにライソゾーム内に入り各種酵素によって分解され細胞内にエネルギー源として蓄えられるか、細胞内に運ばれて細胞膜の構成成分として利用されます。
 


万有生命科学振興国際交流財団より引用

ニーマンピック病 C 型 細胞内コレステロール輸送の破綻

鳥取大学医学部神経生物学 二宮 治明



1. 細胞内コレステロール輸送というブラックボックス

コレステロール(以下 CS) の輸送というタイトルから皆さんはどのような言葉を連想されるだろうか?カイロミクロン、HDL、LDL、VLDL、アポ蛋白質、さらには高脂血症、動脈硬化… これらは全て、消化管と肝臓を中心とする体循環系でのCS 輸送に関するキーワードであり、ひとつひとつの細胞内での輸送に関する言葉は出てこないのが普通かと思う。それもそのはずで、LDL (low-density lipoprotein) 由来のCS が細胞に取り込まれてから必要な場所(plasma membrane [PM], endoplasmic reticulum [ER]) へと運ばれていく仕組みについてはおおまかな筋道がわかっているにすぎない。理解が遅れている明らかな理由の一つは方法論にあり、脂質分子の細胞内局在/移動を解析する事はなかなか難しい。

Niemann-Pick 病 C 型 (NPC) は、CS の細胞小胞内蓄積を特徴とする小児の脂質蓄積病である。NPC 患者において、病理学的には小脳Purkinje 細胞をはじめとする種々の神経細胞の進行的脱落が特徴であり、臨床的には中枢神経症状が前景にたつ。1997 年、主要原因遺伝子NPC1 が単離同定され、その遺伝子産物 NPC1 は主にリソソーム/後期エンドソームに存在しこれらのコンパートメントからのCS排出に関わることが明らかになった。NPC1 は、HMG-CoA reductase、 SCAP、PATCHED などと同様に、いわゆる sterol-sensing domain (SSD) を有しており、細胞内CS 輸送の key molecule であると考えられている。



2. SSD 蛋白質による細胞内コレステロール濃度の調節ここで、SSD を持つ蛋白質の機能について簡単に説明する。細胞内のいろいろな膜コンパートメントのCS 濃度は一様ではなく、例えば、PM では ER よりも高い。最近ではさらに同じコンパートメントのなかでも局所的に濃度の違う部分があると考えられている(いわゆるラフト仮説)。このCS 濃度の調節メカニズムの key となっているのが SSD を持つ蛋白質たちである (図 1)。

まず、HMG-CoA reductase は、内因性のCS 合成系の律速酵素でありER に存在するが、ER の CS 量が増加すると、酵素蛋白の分解が亢進し合成が低下するというfeedback regulation の系が存在する。
次に、SCAP は転写因子SREBP の活性を ER のCS 量に依存して調節している。SCAP, SREBP は、ともに ER に存在する。ER のCS 量が低下すると、SCAP/SREBPは Golgi に移行し、そこで SREBP がプロテアーゼにより消化され、つくられたSREBP/mature form は核内に移行して、 LDL 受容体、HMG-CoA reductase などの遺伝子の転写を活性化する。この結果、外因性のCS の取り込み、内因性の合成が共に亢進し、細胞のCS 含量を増加させる。ER のCS 量が増加すると、逆向きの反応が起きてCS 含量は低下する。

このように HMG-CoA reductase と SCAP はいずれも ER の CS 濃度依存性にCS 合成系と取込み系を制御している。この事から類推すると、NPC1 はおそらく局所(endosome) のCS 濃度依存性に脂質輸送を制御すると予想されるのだが、その分子レベルでの機能(実際に小胞輸送のどのステップを、どうやって制御するのか)はいまだ不明である。

その他の SSD 蛋白質のうち、PATCHED はsonic hedgehog の受け手側の細胞の情報伝達に必要であり、この情報伝達は CS 依存性に調節されている。さらに、sonichedgehog の生成には CS による修飾が必要であり、dispatched はsonic hedgehog の放出を制御している。従って、PATCHED/dispatched は(CS 量を調節するというよりは)、CS 濃度依存性に細胞の反応をコントロールする役割を持っている。

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図 1 SSD を持つ蛋白質の構造と局在。点線のボックスで囲んだ領域が SSD。



3. NPC;細胞レベルでの生化学的異常NPC1 は主に late endosome に局在し、このコンパートメントからの外向きの脂質の輸送に必要である。NPC1 欠損細胞でのCS 輸送の基本的な異常は、細胞外から供給された CS のリソゾームから細胞の他の場所への輸送の障害である(図 2)。LDL に対する正常の細胞の反応と比較してこの異常を説明する。

まず、正常の細胞をリポ蛋白を除いた血清 (lipoprotein-deficient serum) で培養すると何がおきるだろうか。単純には、細胞外のCS の枯渇のため、細胞はより多くのCS を取り込もうとし、合成しようとする。この適応は主に LDL 受容体と HMG-CoAreductase の up-regulation による。さて、この状態から細胞に LDL を負荷すると、正常細胞では逆向きの反応、LDL 受容体とHMG-CoA reductase の down-regulation が起きる。この時、LDL に含まれる CS の動きを追ってみると、LDL 内のCS エステルはリソゾームで加水分解されて遊離型CS となり、PM または ER に輸送されて再びエステル化される。NPC 細胞では、遊離型CS がリソゾームにとどまるため、細胞内でのエステル化反応が正常細胞に比べて遅れ、LDL 受容体と HMG-CoA reductase の down-regulation 反応も遅れる。当然予想されることだが、SREBP の核からの消失も遅れる。

NPC 細胞は、LDL に対する反応が遅れている間、CS が充分供給されているにもかかわらず、より多くの CS を合成しようとし、取り込もうとする。従って、NPCは、細胞外に利用可能な CS が存在するという情報についての、細胞内情報伝達機構の異常であると考えることができる。

そして、このような反応性(適応性)の異常を持つ細胞を、通常の血清で(リポ蛋白の存在下で)で培養すると何がおきるだろうか。NPC 細胞では、filipin 染色により、核周囲のリソゾームに遊離 CS の蓄積が証明される。



4. NPC での神経細胞死の機序の解明にむけてNPC 細胞での CS 輸送の異常はclear-cut なのだが、これが組織/個体レベルでの病理変化を説明するか、となると全然別の話になる。NPC での主要な病理学的変化は神経細胞の進行的脱落であり、これが患者の直接の死因である。NPC における生化学的異常(細胞内脂質蓄積)と病理学的変化(神経細胞死)の因果関係を明らかにする目的で、これまでに遺伝学的方法(NPC1 と LDL 受容体または ganglioside 合成酵素の doubleknock out mouse の表現型の解析)や薬理学的方法(ganglioside 合成阻害薬などの効果の解析)による研究が行われてきたが、結果はいずれも negative であり、脂質蓄積そのものが神経細胞死の原因ではないと考えられている。NPC での神経細胞死の原因は誰も知らない。しかし、世界中の研究者がこの答えを求めて研究を展開しており、楽天的かも知れないが突破口が開ける日も間近いように感じられる。

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図 2 NPC 細胞でのコレステロール輸送障害の模式図。



文献
・Kuwabara PE & Labouesse M (2002) The sterol-sensing domain: multiple families, a uniquerole? Trends Genet, 18, 193-201

・Ioannou YA (2001) Multidrug permeases and subcellular cholesterol transport. Nat Rev MolCell Biol, 2, 657-68,

・二宮 治明、大野 耕策 (1999) ”ニーマンピック病 C 型とコレステロール”蛋白質核酸酵素, 44 巻, 1213-8.




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